幻想奇譚 白蛇伝(2017/5/27 13:00)

"妖が人間に恋をする…ただ純粋に…"

舞台『幻想奇譚 白蛇伝』

 

 本公演の記事を書くのにとても悩みました。後に観劇したはずの抜刀課の記事を先に書いたのも、悩んでいたせいです。何に悩んでいたかというと、恐らく私はこの舞台の演出・脚本と完全に好みが合わなかった。主役の方のお芝居も合わなかった。とても素敵なセットを使って、凝った衣装を着て、いいと思える部分も沢山ありましたが、それでも合わなかったんです。

 なので、いいところも(私の目から見て)好きではなかったところも、両方書こうと思います。自分が何を好きで、どんな舞台が好きなのかを記していくということも目的の観劇日記なので。

 ただひとつ補足すると、私は割りとどんな舞台や作品でも楽しかったー!とお手軽に満足してしまえるタイプです。なので、作品の善し悪しっていうのは本当によくわからないし、役者さんの「いい演技」とやらもまったくもって見分けがつきません。ただ好きだったか、好きではなかったか。それがすごく主眼に置かれてしまうので、好きになれないとこうなってしまうんだな……と思いました。

 

 合わなかったところは簡潔に。

 舞台転換がすごく多い(そこ背景セット必要?というような場面が……転換の時も恐らく「スピーディに」と指示されているのかもしれませんが、とても早く転換しすぎてかえってぶつけたりしないか心配になるレベルでした)

 もう少し掘り下げて欲しい人物が多い(民話という原作を元にしている以上仕方ありません、が)

 主演の中の一人のお芝居(これはもう好みです……言葉遣いの揺れ、などは脚本にも原因はあるかとは思いますが、何故そこでそういう口調になるか?その感情は?というのが……うまく飲み込めませんでした)

 殺陣(多分これは西田舞台⇒人狼TLPTのOPの殺陣を連続で観たせいもあります。人狼はアクションプロダクションの方もいらっしゃいましたから…正直に言うと物足りなかった、かも)

 

 本当に、ただの好み、です。なので、すごく勝手なことを言うと合わなくて残念だった、という感想です。終演後周りで号泣している方や、SNSの検索で感動だった!という意見も見ていてそう思えなかった自分に残念、という意味での……。とは言え、いいと思った部分もたくさんあったので、それはたくさん掘り下げていこうと思います!

 

 ◎白蛇という妖の演出

 これはすごく綺麗でした。普段は人の形をとる妖怪が本性を表した時の演出ですね。映像や投影に頼るのではなく、白装束の女性たちが布を持って白蛇役の彼女の周りを取り囲む、という。アンサンブルさんの中でおひとりとっても指先まで美しい方がいらっしゃったんですけどお顔を覚えることが出来なくて残念……こういった演出や表現の仕方もあるんだな~と思いました。布量の多い衣装は正義。早替えもこうやるんだ~という新発見。

 

 ◎妖サイドがすき

 いわゆる敵サイドになるんですが、正直こちらの方が好みだったり……時折見える過去の話がすごく気になっていて、ここがもう少し掘り下げてほしかったな……と難度も思いました。胡媚娘の過去とか知りたかったな。彼女が今回の舞台の中で一番好きでした。お芝居も、立ち位置も、すべてを含めて。次点は人間サイドですが王琳。コミカルでお芝居にいい清涼感を与えてくれる気がしました。

 

 ◎ギャグパート

 全体的な演出とは好みが正直合わなかったんですが、この演出の方と笑いのノリは合うんですよね……。以前に見た薄桜鬼SSL(まだ記事書いてない)でも笑いのノリは合うんだよな……と遠い目をしながら見ていました。笑いのツボが同じというか。入れて欲しいタイミングで入ると思ったネタが入るので満足というかなんというか。

 

 ◎とある箇所の演出

 散々演出云々言いましたが、最後の妖たちの呼びかけはすごく心に来ました。

 「忘れるな、白蛇」

 この言葉はその日寝る時も頭のなかでリフレインしていました。否定したって、それでもお前は妖なんだと。責めるように、刻み込むように。

 

 ◎結末

 ある種のメリバのような。ハピエンのような。ただ、純粋なハピエンではないところに舞台やお話特有のデウス・エクス・マキナが感じられなくてとても好きでした。これは元の民話がそうなのかもしれませんが……でもかなり性別やら何やらいじってましたし、どうなんだろう。今度暇があったら見てみようと思います。

 

 色々と書いてはしまったんですが、良い舞台、良い作品ではありました。ただ、演出…というか、芝居の進め方と、とある方の演技が私の好みに合わなかったのだと思います。こうやって自分の好みを見つけていくことも楽しみに変えられたらと。今はそう思っています。